SM、特に「SMの女王様」を絵に描いてください、という題があったとき、
その女王様が持っているであろう2大道具、それは鞭と蝋燭(ろうそく)ではないでしょうか。
鞭は何となくみなさんでも想像がつきやすいとは思うのですが、
蝋燭はSMの知識がない方からすると、どう楽しめばいいのかすら
わかりづらい道具なのではないでしょうか。
実際、僕も使用してみるまではあまりわかりませんでした。しかし、
溶けた蝋をかけられて喜ぶM女さんの艶やかさだけでなく、
S男性との間に繋がる信頼の架け橋が快感のブースターになっているところを目の当たりにして
なんて深い世界なんだと驚愕した記憶が今でも鮮明に蘇ります。
M男性ーS女性の場合でも同様です。あられもない姿を見られて興奮しちゃう、
脳機能により快感がどこまでも増幅していく、そんなプレイでもあります。
安全に行う知識と技術、そして思いやりがふんだんに詰まったプレイを楽しみましょう。
まず、どうやって快感になるか、考えていきましょう。
蝋燭でも縄でもその他の痛い系の道具もそうですが、物理的な刺激の信号は
皮膚の「温痛覚」を伝えるC線維神経で脊髄と脳に伝達されます。
基本的には、皮膚から脊髄までは1個の神経細胞で刺激が伝わりますので、
すごく瞬間的な情報伝達が行われます。
「熱い、痛い」はもちろん身体にダメージが入るものですから、何もない状況で
その刺激が入った場合、人間は「逃げなくちゃいけない」という反応が出ます。
脊髄からの直接的な反射反応によって筋肉が収縮し、咄嗟に刺激から逃げる動きが出ます。
この動き自体は、危険から逃げるためには非常に重要です。
ですが、この動きを「自分の意志で止める」あるいは「逃げられないようにさせられている」
という状況下では、連続してこの刺激が入ることになります。すると、身体は順応して
「刺激がたくさん入っている」という理解をします。
実はこの状況、愛撫でも似たことが起きるんですね。なので、脳はそちらの快感を思い出し
「これは快感ではないか」と勘違いするようになります。さらに、そんな刺激で
感じちゃってるという状況を考えるようになり、恥ずかしさと快感の相乗効果で
普段以上の気持ちよさを得ることができるようになります。
すごいですよねぇ、人間って。
蝋燭の場合、蝋の持つ熱が刺激となります。蝋はすぐ冷やされて固まるので、
蝋が落ちた場所の皮膚に熱刺激が入ります。
熱い蝋だと冷えるまでに熱が皮膚にダメージを与えます。
このダメージ量を調整することが技術なんですね。
そして、そこに関する予備知識を覚えておきましょう。
SM用の蝋燭は、一般的な(仏壇用とかの)蝋燭とは大幅に異なる点があります。
それは、融点です。つまり、溶ける⇔固まるを行き来する温度です。
一般的な蝋燭(白いの)は60℃を超えますが、SM用は「低温蝋燭」、
だいたい45-50℃前後が多くなっています。これが非常に大事で、皮膚にやけどを負わせない
必要十分な熱を伝えるために作られているものである、ということです。
なので、超上級者以外はSMのために作られた蝋燭を用いることを強くお勧めします。
また、終わった後に蝋を剥がすのですが、ここでもスルッと剥がすために、
始める前にベビーオイルなどの皮膚用オイルを塗っておくこともおすすめです。
あくまでも、必要なのは熱刺激です。それ以外の「無駄なダメージ」を避けることが
思いやりにもなりますし、知識として持っておくとよいですね。
あとは、きちんと受け手側の反応を楽しみ、また「嫌な苦痛になっていないか確認する」ことも
非常に重要です。SM全般にいえますが、愛情の上にさらなる快感を生み出すこと
命題としているはず(そうでない場合も確かにあるのは事実ですが)なので、
この非日常な快感を媒介として、愛情を酌み交わしたいわけですよね。
となると、相手が本当にしんどくなってきていたり、反応が変わってきているようであれば
そこできちんと終わることも大切です。SMに必要な観察力をしっかり鍛えて、
お互いに相手のことを思いながら楽しむ、そんな大切な時間を育んでもらえたらと思います。