これまでの記事で、大まかではありますが
SMを構成する精神要素をそれぞれ解説しました。
しかし、人間の精神とは非常に複雑なもの、
それぞれの心が単一の要素で説明できるほど単純ではありません。
ですので、実際にSMを心から理解して楽しもうとした場合、
自分も相手も、どの要素がどれだけあるのかを理解することが大切です。
大半の方は、サディズムとマゾヒズム、ドミナントとサブミッシブのすべてを
多かれ少なかれ持っていると考えてよいと思います。中にはどれかが抜けてる方も
いらっしゃるのですが、基本的には全て持っていると考えて
じゃあどれがどのくらい入っているのか、そう探っていくとよいかと思います。
ただ、これだけだとまだ不十分な要素があります。それは、その要素が
「自分主体」なのか「相手主体」なのか、ということです。
なんのこっちゃ?とお思いかもしれませんが、一番わかりやすい具体例で考えます。
マゾヒズムを例にとりますね。マゾヒズムはもちろんですが
苦痛を快感に変えることができる才能の持ち主であることは、以前に説明した通りです。
ですが、この才能も大きく次の2パターンに分けることができます。
・「この人から受ける苦痛が大好き」
・「苦痛を受けて頑張る自分が好き」
すなわち、興奮の材料が「相手からの刺激」なのか「耐える自分」なのかですね。
ここを見落とすと、自分や相手を理解できなくなってくる要因につながります。
前者は相手を選ぶ、そして心を開くことがマゾヒズムを発揮する重要な要因になります。
ということは、マゾヒズムを裏打ちするサブミッシブが重要であるということです。
一方、後者はより追い込まれると興奮できるところがあるので、より追い込んでくれる相手を
選んでいくこととなります。この場合はドミナントとサブミッシブの軸はそこまで
重要視されないことになります。
ここまで整理ができたら、もうおわかりですね。
相手によりマゾヒズムのパワーが変わりそうであれば相手主体、
マゾヒズムの相性から相手を選びたくなるのが自分主体、そう考えておくと
おおむね間違いはないかと思います。
また、これはあくまで経験則なので何かのデータがあるわけではありませんが、
お相手によりサディズムとマゾヒズム、ドミナントとサブミッシブのバランスが
変わっていくこともあります。サディストさんとお付き合いした方にマゾヒズムが芽生えたり、
支配した結果、より強烈な刺激を求めてマゾヒズムが開花することもありますね。
マゾヒストさんとお付き合いした男性がサディズムに目覚めることだってあります。
ただ、ドミナントだけはかなり開花することが難しいように思います。
というのも、お相手のさまざまな姿を受け止め、かつサブミッシブをあたたかく見守る
人間としての器も要求されるからではないか、と推測しています。
特に女性のサブミッシブさんがお相手男性を求める際、よく「年上のひとがいい」と
お話しされることが多いのですが、ここにはやはりお相手の人生経験が豊富で
身を任せるのにふさわしい可能性が高いからだと推測されます。
エッチでも普段の生活でも、「私Mです」と言っている女性に対して
「Mだったら何でも言うこと聞くだろう」と勘違いをして、
自分の身勝手を押し付けるタイプの男性を見かけることが多いです。
もちろんこれは男女が逆でもあり得る話です。
しかし、たとえマゾヒズムが強い方であっても、身勝手に対応したい「だけ」の人は
ほぼ存在しないと考えていいかと思います。そうではなく、
自分が好きな、あるいは尊敬する相手を喜ばせるためならがんばれちゃう、というのが
サブミッシブの特性であり、またそのうえにマゾヒズムが成り立つ場合が
極めて多い、ということは頭に入れておく必要があります。
特に支配をしたいと思う方は、まず自分が「何を与えられる人間なのか」というのを
自ら深堀りし、人間としての器と価値を高めていくことが重要です。
そのうえで、相性がいいお相手を上記のように分析して、
合わない部分がある程度あるお相手にはきちんと「相性がそこまでよくない」と
説明できるようになると、さらに信頼を得ることになると思います。
また、「一緒に楽しんでいったらこうなれるかもしれないね」という具体的な
ビジョンを説明することにより、お相手にも安心して楽しんでもらえます。
…こう考えていくと、なんだかビジネスのHow toにも通じるものが出てきますが、
SMもビジネスも、最終的には人と人との心のつながりがカギになると思えば、
ある意味SMによる人間の成長により、仕事もプライベートも「デキる」ようになる、
そう結論付けるのも良いのではないかと感じています。
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