さて、前回は主軸となる各種キーワード、サディズム、マゾヒズム、ドミナント、サブミッシブを
主軸にお話ししました。(詳細はSM用語を整理しよう①をご覧ください。)
これらのキーワードはSMを理解するうえで根幹となる用語になります。
もちろん、SMを極めていらっしゃる皆様からは「それちょっと違うよー」という部分もあるのは
承知のうえなのですが、あくまでこのサイト上で概ね理解してもらうための定義とお考えください。
そのうえで、各種用語を解説していきながら、それぞれの嗜好や特徴を知っていきましょう。
といっても、これは性的マイノリティに含まれるみなさんにも当てはまるかもしれませんが、
実はマイノリティになればなるほど、「私はこの分類には当てはまらない、私は私だ」と
分類されること自体を嫌がる方々が出てくることも事実です。
もちろん、そのお気持ちはよく理解できるのですが、あくまでこの分類・嗜好は
構成要素であり、これらをどの割合でどれだけ含んでいるかというのは個人差があります。
十人十色ではありますが、その色の構成要素を並べていると思ってもらえたら幸いです。
硬い文章だけでは分かりづらいかもしれませんが、例えばカレーで考えると、
大きく欧風カレー、インドカレー、日本カレーと分け、(出典:カレー総合研究所)
それぞれ細かい分類をその下で行うわけですね。でも、その細かい分類に対して
絶対に綺麗な線引きができるのか、と言われたらそうではなく、
それぞれの分類の特徴を合わせたものだってあるわけです。
それに、例えば「うちはこのスパイスを使わないから、よそと同じ分類に入れるな」とか
「水の含有量が違うから他と違うんだ」などと主張されても、ほとんどの方は
「概ねこのカレーよね」と思うわけです。でも、私自身はそれでいいと思っています。
お互いを理解する上での共通言語ができればそれで良し、非常に嗜好が近い方同士では
細かい理解を重ねていくためにその違いを考えるきっかけになる、という使い方を
してもらえたらと思っています。
では、それぞれ説明を加えていきましょう。
最初に紹介したい言葉、それは「BDSM」です。
欧米ではBDSMという表記でSMを表すことが多いです。
海外サイトからの引用にはなりますが、この「BDSM」とは
「似ているが異なる、力の不均衡を性的快楽に変える3つのコミュニティ(性癖軸)、
『緊縛や規律(Bondage and discipline)』、
『支配と服従(Dominant and submissive)』、
『加虐と被虐(Sadism and Masochism)』の頭文字をとったもの」と説明されています。
(MasterClassより引用)
ではなぜこの3軸が纏められるか、それはこの3軸が
「性的な触れ合いの中で、決められた役割を担うことで喜びと満足感を得る」と
いう特殊な要素があるから、とされています(同一引用)。
この中で、Dominant and submissiveとSadism and Masochismは①で説明しましたので、
残るBondageとDisciplineについて説明しましょう。
Bondage(ボンデージ)は「緊縛」と訳されます。ご想像通り、縛るということですね。
狭義には、縄を使い相手を拘束することを指しますが、最近は縄だけでなく
さまざまな拘束具や拘束用の衣服などを利用する場合も指すことが多くなってきました。
いずれにせよ、物理的に行動や体動の制限を行う・不自由にさせるという点では共通ですね。
緊縛については、さらに詳しい解説を行った方が良いかと思いますので、ここでは
概念の整理に留めます。また楽しみにしておいてくださいね。
また、この「緊縛」はサディズム+ドミナント側ならびにマゾヒズム+サブミッシブ側と
それぞれの要素がどの強さで絡んでくるかによっても、意味合いが変わってきます。
同じ「緊縛好き」という嗜好を持つ同士であっても、微妙に噛み合わないのは
結局このバランスが異なっているから、と考える方がいいでしょう。
上記の6単語の中で最も聞きなじみの少ない言葉がDiscipline(ディシプリン)かもしれません。
というのも、日本では「支配」とか「調教」に含まれてしまうことが多いので、
このDisciplineを訳した「規律」という単語が性的な連想をしにくい用語になっているかと思います。
この「規律」ですが、これは「ご主人様がこのようなサインを出した時には奴隷はこうしなさい」という
ルールを決めておき、それが守れなかったらおしおきを行うというプレイのことです。
なお、ご主人様が出すサインにも様々な種類があります。特定のハンドサインを見せる場合もあれば、
特定の単語や数字を口で言ったり、特定のポーズをしたり、特定の音を聞かせたりすることもあります。
そして、それに対応する「奴隷がとるべき行動」も様々です。ご想像の通り、性的なことも多いですが、
性的でない行動を敢えて指定しているときもあります。行動ができなかったときのおしおきは、
苦痛を伴う性的刺激(いわゆる加虐プレイ)となることが多い印象です。
具体例としては、
・ピースサインを見せたらお口でご奉仕、忘れていたらお尻スパンキング10回
・「明鏡止水」と言われたら性器を露出し濡れ具合を報告、忘れたらディルドを立てスクワット
・ベルを鳴らしたら直立不動で1分待機、忘れたら拘束具で拘束し乳首クリップ攻め
などです。最後のはこれ単独では意味不明かもしれませんが、例えばこの1分の間に
玩具攻めとかフェザータッチ、あるいは痛みを伴う刺激を入れても耐えさせる、などといった
攻めを行い耐えさせるということもできますし、重いものを持たせるとかローションをかけるとか
いわゆる屈辱的なことも入ってくる場合があります。つまり、この「規律」というのは
精神的に行動や体動の制限を行う・不自由にさせるというものです。
重要なことは、制限されるサイドが「命令に従っていることが幸せだ」と思えることです。
今回はBDSMというキーワードをもとに、
「性的な触れ合いの中で、決められた役割を担うことで喜びと満足感を得る」という
3軸について解説をしてみました。
ちょっと長くなってしまいましたね。次回はこれまでの特性がリアルではどう出てくるのか、
そのあたりを考えていきましょう。